――虚構の中の現実
ということに――
僕は関心があるのです。
「虚構の中の現実」とは、どういうことか――
それは、例えば――
ビジネス・スーツの宣伝用の写真で――
男性のモデルと女性のモデルとが、商品のスーツを身にまとって、何やら打ち合わせのようなことをしている情景をみたときに、
(実際には、あの二人は何を話しているのだろう?)
と思うことから始まります。
当然、宣伝用の写真の中の情景なので――
二人のモデルは、単にお芝居をしているだけなのです。
本当に仕事の打ち合わせをしているわけではない――
が――
では、それらしい話を何もしないでいるのかいえば――
たぶん、そうではありません。
そのお芝居を自然にみせるために、何かしらの話をしているはずなのです。
例えば、
――このあとの撮影のスケジュール、きいてる?
――ああ、午後までに結論を出すっていってたけど……。
――ということは、しばらくは休憩ってことかな。
――そうかもね。
みたいなやりとりを――
これこそ――
まさに「虚構の中の現実」なのです。