――筋(すじ)を通す。
ということは――
世間の秩序を守るためには、どうしても必要なことなのです。
無理筋が通るようでは、秩序は乱れます。
結局は、
――何でもアリ!
になってしまう――
世間の多数の人々が「何でもアリ!」に走ったら――
世間の秩序は雲散霧消するしかないでしょう。
そこでは、人は保身に汲々とせざるをえず、また、我欲に鋭敏にならざるをえません。
ここでいう「世間」は、少し淡白な意味です。
あえてカタカナ語で表記をすれば、
――コミュニティー(community)
とでもなりましょうか。
利害関係が複雑に絡みあった人間関係の一群と捉えていただければ、よろしいでしょう。
筋を通すということと物事を穏便に済ませるということとは――
根本的に別次元です。
そもそも、筋を通せば、むしろ物事が荒立つくらいですので――
それでも――
世間の秩序を守るためには、荒事を嫌わずに、筋を通すのが良いのです。
なぜならば――
大局的見地に立った時に、筋を通すための荒事は、失われた世間の秩序を取り戻すための荒事よりも、ずっと軽微で建設的だからです。
喩えていうならば――
外交交渉の場で暴力行為に及ぶ外交官を同様の暴力行為で抑え込む荒事は――
その外交交渉が決裂して二国間紛争が勃発してしまう荒事よりも――
ずっと軽微で建設的でしょう。
後刻、禍根を残したくなかったら――
筋を通すための荒事は回避するべきではありません。