人の心のことは――
まだ何もわかっていないに等しいのです。
なぜ人の体に心が宿るのか――それも、なぜ脳に宿るのか――
そもそも――
心とは何か――その定義すら、あいまいなままなのですから――
が――
人の心について、さもわかっているかのように語られることがあります。
もちろん――
人の心について、少しはわかっているところもあるのですよ。
そのことについて語るのは、なんら問題ではないでしょう。
問題なのは――
実際には、わかっていることは少しだけであるにもかかわらず――
そのほかの大部分については、わかっていないことだらけであるにもかかわらず――
わかっていることだけをことさらに語ることによって、大きな誤解を招くことです。
すなわち――
我々は、人の心について、すでに十分に理解しているのだ、と――
人の心を語るときには――
いかにわかっているかを語るよりも――
いかにわかっていないかを語ることに重点をおくのがよいでしょう。