マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

算術を存分にみせてあげれば

 ――数学が苦手だ。

 とか、

 ――数学がわからない。

 とかいう話を――
 よく聞くのですが――

 本当に苦手で、わからないことは――
 実は、数学ではなくて、

 ――算術

 ではないか、と――
 思うことがあります。

 ここでいう「算術」とは、紙と鉛筆とによる計算技術のことです。
 中学生や高校生たちが数学の試験で要求される技術のことです。

 算術は技術なので――
 それを、

 ――習得したい!

 と心から思わない限り、なかなか興味はわかないものです。

 算術というのは――
 けっこう厄介なのですよ。

 例えば――
 周の長さが60の直角三角形で、斜辺へ下された垂線の長さが12であるとき、この直角三角形の3辺の長さを求めよ――
 という問題では――

 まず――
 この直角三角形の3辺の長さをa、b、cとおき、斜辺の長さをcとおいて――

 周の長さが60であることより、

  a + b + c = 60

 を導き――
 三平方の定理が成り立つことより、

  a^2 + b^2 = c^2

 を導き――
 三角形の面積が2通りに表されることより、

  ab/2 = 12c/2

 を導き――

 これら3つの等式を連立方程式とみなし――
 これを解けばよいのですが――

 この連立方程式を解くのが――
 けっこう大変なのですね。

 短時間で正しく解くには、それなりに高度な算術が要求されます。

 そういう算術の実践をみて、

 ――うわ~、すご~い!

 と思わない限り、なかなか算術を習得しようとは思わないものなのですが――
 その実践を目の当たりにする機会というのは、学校では意外と少なくて――

 だから――
 生徒たちは算術を真剣に習得しようという気持ちにならず――
 ひいては「数学が苦手だ」とか「数学がわからない」とかいった思いをつのらせてしまうのではないかと、僕は考えています。

 学校の数学の先生の多くは、数学の知見は教えても、算術の実践はみせたがらないのですね。

 もし、それを存分にみせてあげれば――
 少しは数学好きが増えるんじゃないかと、僕は感じています。

 野球やサッカーの巧い大人たちが学校のグラウンドで毎週のようにプレイをみせていれば――
 生徒たちの何人かは、ほぼ確実に、

 ――自分も、ああなりたい。

 と思うものでしょう。