昨夜未明――
自宅のアパートで、ぐっすり眠っていたら――
――ジリジリジリジリジリ!
と、うるさいのですね。
あわてて電気をつけて、
(何だよ、こんな時間に……。目覚まし時計か?)
と思って、寝ぼけまなこで辺りを見回しても――
それらしきものはない――
そもそも――
僕の目覚まし時計は「ジリジリジリジリジリジリ!」ではなく、「チチチチ! チチチチ! チチチチ!」なのですね。
(なんかおかしい)
と思って、いよいよ真剣に部屋の中を見回しても――
それらしきものは見当たらず――
それどころか、
(部屋の外から聞こえてね?)
急いで部屋を出て玄関の扉を開けると――
廊下の火災報知機のベルが鳴っているではありませんか。
(うわ~、火事かよ)
と思って――
あわてて部屋に戻って財布と鍵と携帯電話とをもって――
ついでに、寝床の横においてあったリュックも背負って――
寝巻きのまま外に駆け出しました。
もちろん――
心のどこかでは、
(もしかして誤作動……?)
と思ってはいましたが――
僕は、去年の震災での津波を経験しているので、
(とにかく逃げよう!)
と思ったのですね。
とにかく災難に遭ったら、
――逃げるが勝ち――
と痛感していたので――
結局――
アパートの外に出て、ぐるっと外壁を見回しても、火や煙などは確認できず、
(こりゃ誤作動だな)
と思って一安心――
その後、警備会社の人が来て、誤作動であることを確認してくれました。
ですから、
(やれやれ……)
で終わったのですが――
ちょっと気になったのは――
火災報知機のベルを聴いて僕と同じようにアパートの外に出てきた住人が、僕を入れて、たったの3人だったのですね。
僕の住むアパートは、少なく見積もっても30人くらいは住んでいるはずなのですが――
どうしたことでしょう?
単身者用のアパートなので――
皆、腹をくくっていたのでしょうか。
――死ぬとしても、自分だけだし……。
みたいに?
それとも――
火事のリスクに鈍感だった?
睡魔に負けて外に出てこれなかった?
……
……
たしかに――
僕も、去年の震災で津波の猛威を目の当たりにしていなかったら――
かまわず、寝つづけていたかもしれません。