歴史上の人物の中には、
――若いころは聡明な英傑だったのに、歳をとって暗愚な暴君になった。
という人が――
案外、大勢います。
気の向くままに名を挙げれば――
わが国では、豊臣秀吉――
お隣の中国では、唐の玄宗でしょうか。
今年のNHK大河ドラマで扱われている平清盛も――
たぶん、そうだと思うのです。
そういう歴史上の人物の話を聞くと、
(たぶん、今日でいうところの「認知症」だったんだろうな)
と思うのです。
それも、いわゆる「まだらボケ」の認知症ですね。
知的能力のある部分は残っていて、他のある部分は損なわれてしまっている――
というタイプの認知症です。
なぜ「まだらボケ」だったと思うかといえば――
もし、まんべんなく知的能力が損なわれるタイプの認知症であれば――
おそらく、暗愚な暴君としてすらも、うまく振る舞えなかったと思うのです。
もちろん――
本当のところは、わかりませんよ。
タイム・スリップして本人と面会し、十分に診察をしなければ――
本当のところは、わかりません。
仮にタイム・スリップできたとして――
本人と面会するのは至難の業であったでしょう――何しろ、彼らは皆「暗愚な暴君」であったわけですから――
とはいえ――
――もしかして認知症だったのかも……?
と疑うことで――
いわゆる晩節を汚した英傑たちの印象が、がらっと変わってしまうのですよね。
それはそれで、新鮮な体験です。