死を身近に感じることができるなら――
ふだんの生き方が、少しは変わることでしょう。
生きていることが当たり前ではなくなってくる――
それは、やがて至る「死」という名の到達点を目指す道のりです。
到達点は一つでも――
そこに至る道のりは、無限の多様性を呈します。
どの生き方も、その生き方に固有で唯一無比の偶然性を含んでいるに違いありません。
一般に、「死」は点であり、「生」は、その点に至る直線、あるいは曲線だと思われがちですが――
実際には、その点に集まる平面、あるいは曲面、あるいは立体かもしれません。
それは、「死」という点の位置を明確に特定し、その点の近傍の情景に慣れ親しむことでみえてくる図形です。