夜、電車に乗っていると――
不思議な感覚にとらわれます。
――ガタン、ゴトン
という車輪の音に耳を傾けながら――
車内の灯りだけを意識していると――
しだいに、窓の外が暗闇にみえる――
その暗闇が、本当の暗闇に感じられるときに――
まるで、列車が中空を進行しているかのような――宇宙空間を航行しているかのような――そういう感覚を抱くのです。
もちろん――
窓の外を強く意識しては、ダメですよ。
窓の外に、例えば、コンビニエンスストアの電飾をみたり、渋滞車列のヘッドライトをみたりすれば――
宇宙空間のイメージは吹き飛びます。
窓の外の暗闇が本当の暗闇に感じられるときというのは――
コンビニエンスストアの電飾も渋滞車列のヘッドライトも目に入ってこないときです。
なんとも――
不思議なのですね。
というのは――
そういうときであっても――
線路の上を転がる車輪の音だけは、聴こえ続けているのです。
車輪が線路の上を転がっているのだから――
宇宙空間を航行しているわけがないのですが……(苦笑
でも――
その矛盾は気づかない――気にならない――
だからこそ――
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』が生まれ――
その後には、松本零士さんの『銀河鉄道999』が生まれたのだと思いますが――
『銀河鉄道の夜』では、よくわかりませんが――
『銀河鉄道999』では、宇宙空間を航行する列車が、たしかに車輪の音を響かせていたように記憶しています。