――あの人には表裏がある。
などといいます。
たいていは――
良い意味では使われませんね。
悪い意味で使われます。
――相手によって言動を変える。
くらいの意味で――
が――
実際には、どんな人にも「表裏」はあるものです。
「相手によって言動を変える」ということそれ自体は、非難される材料にはなりえません。
良識のある社会人は、皆、そうしているからです。
この問題は――
喩えていうならば――
人の心の“形”なのだろうと思います。
普通は、自分の心は“球形”か、それに近い“形”をしておくものなのに――
なかには“薄い面のような形”にしている人がいて――
その“面のような形”の表裏が目まぐるしく入れ替わる様子に、周囲の人たちの非難が集まるのではないか、と――
心が“球形”をしていれば、表裏を入れ替えても、すぐには気づかれないわけです。
そして――
その様子は、周囲の人たちを不快にも不安にもさせない――
が、“薄い面のような形”だと――
なぜか周囲の人たちを不快にさせたり不安にさせたりする――
その原理は、よくはわからないけれども――
そういうことではないかと――
僕は思うのです。