書くのが苦手な人は、話すのが得意で――
話すのが苦手な人は、書くのが得意で――
たいていは、どちらかなのですよね。
どちらも得意という人は――
そうはいないものです。
人の思索の出力経路というものは――
たぶん一種類ないし一系統なのでしょうね。
その経路が「話す」であれば「書く」が滞り、「書く」であれば「話す」が滞る――
そういうことであろうと思います。
なぜなのか――
おそらくは――
話す時に気を付けるべきこと――例えば、伝え方に勢いをもたせる、相手の予想を故意に覆すといったことは――
書く時には、無用の外連味(けれんみ)とみなされて――
書く時に気を付けるべきこと――例えば、論の展開の緻密さ、構成の美しさ、語彙・表現の調和といったことは――
話す時には、些細な成形術とみなされる――
そういう傾向があるからでしょう。