別れの挨拶の「さようなら」は――
何とも不思議な言葉です。
この言葉の原形は、おそらくは「左様ならば」――
つまり、
――そうであるならば
なのでしょうけれども――
では、
(その「そうであるならば」というのは、いったいどうなっていたら、「そうであるならば」なんだろう?)
と思うのです。
いったん考え始めると――
なかなかに悩みます。
きっと、
――このまま別れても問題がなければ、もう別れましょう。
といった意味なのでしょうね。
つまり、
――このまま別れることが問題ならば、もう少し一緒にいましょう。
と――
*
きょう――
仙台駅のプラットホームを歩いていたら――
隣を歩いていた男子高校生のグループが、
「それじゃ~ね~」
といって別れの挨拶を交わしていました。
(なんか不自然な挨拶だな)
と思って聞いていたのですが――
この「それじゃ~ね~」も「さようなら」の亜種に違いありません。
ふと、
(そういえば……)
と思い当たりました。
(僕も10代の頃は使っていたな)
と――
「それじゃ~ね~」と――
まだ、そんなには仲が良くなっていない人たちへ――
お互いに、まだ少しは気を使わなければならない同級生などに向かって、「それじゃ~ね~」と――
この「それじゃ~ね~」の「それじゃ~」も――
きっと「このまま別れても問題がなければ」の意味でしょう。
別れることに問題がないことを確認した上で、至極あいまいに別れ意思表示を行う――
たしかに、人の世では大切な作法に違いありません。
*
こうして考えてみると――
「さようなら」も「それじゃ~ね~」も、一見、不思議で不自然な言葉ですが――
なかなかに合理的な挨拶なのですね。