――学と芸と
ということを――
もう何年も考え込んでいるのですが――
学というのは、学問・科学のことですね。
英語でいえば「science」です。
芸というのは、芸術・技術のことです。
英語でいえば「art」――
学や芸の利点・欠点を一つひとつ挙げていったら、きりがありません。
ですから――
今は挙げていったりはしませんが――
一つだけ、どうしても気になっている点を一つ――
学には、学に携わる人々の間で議論の余地があるけれども――
芸には、それがない――
つまり、芸に携わる人々の間で、闊達に議論が交わされることは、あまりなく――
ただお互いに自分や相手の芸について控え目に印象を述べ合うだけ――
このことが、学の利点なのか、芸の欠点なのかは――
それは、いまひとつ判然としないところです。
闊達な議論が、ときに不毛な議論に堕落することは、いくらでもあるし――
控え目に印象を述べ合うことで、お互いの印象が研ぎ澄まされていくということも、大いにありうるからです。
大切なことは、はきちがいをしないこと――
学のつもりで芸をしない――
芸のつもりで学をしない――
そういうことだろうと思うのです。
もちろん――
その前提として――
学と芸との間に明瞭な境界線を引くことは、原理的に困難であることは認めた上で――