人の気持ちは、その人自身によって、どうにでも制御されうる、と――
多くの人たちが思っているのですが――
実際には――
そういうことはなくて――
人は、自分の気持ちを、おそらくは全くといってよいほどに、制御できないのですね。
唯一、何とか制御できそうなのは――
その制御できない気持ちを、外に出すか出さないかのところくらいです。
その制御とて――
およそ容易ではない――
でも――
そうやって自分の気持ちを制御できずに持て余すからこそ――
人は、歌を唄い、小説を書き、芝居を演じ、絵画を描いてきたのだと思います。
どうにも制御できない自分の気持ちを、どうにか制御しようと必死になった結果、生み出されたものこそが――
歌や小説や芝居や絵画などの芸術作品であったと思うのです。