心が動くときというのは――
およそ動きそうにもないときにこそ――
と思います。
いかにも心が動きそうなときほど――
心は、えてして動かないものなのです。
ですから――
ある人の心を動かそうと思ったら――
その人の周りに入り浸って、その人に一生懸命に働きかけたりしてはいけないのです。
周囲の人たちが、よってたかって、その人の心へ、
――動け! 動け! 動け!
と促せば――
その人の心は、むしろ余計に動かなくなる――
――勝手にすれば……。
と突き放すくらいのほうが――
その人の心は、がぜん動きやすくなるのです。
……
……
もっとも――
動きやすくなるといったところで――
その歩留まりは恐ろしく低いのですがね。
おそらく1パーセントもないでしょう。
それでも、
――動け! 動け! 動け!
と促すよりは、マシである――
そういうことです。
それだけ――
人の心を動かすことは至難の技である、ということですね。