俳優の三國連太郎さんが亡くなったと知り、
(存在感のある名優が、また一人、逝ったか)
と思ったのですが――
(ちょっと待てよ)
と思い直しました。
僕は、まぎれもなく、三國さんを「ものすごく存在感のある俳優さん」として心に留めていたのですが――
では――
三國さんのお芝居をどれくらい多く見ているのかといえば――
ぜんぜん多くはなくて――
冷静に振り返ったら、
(実は、ほとんど見てないぞ)
ということに気がついたのですね。
わずかに、1988年の『マルサの女2』および1989年の『利休』の2作品――それも、それぞれの作品について、たったの数カット――
つまり――
どちらの作品も、最初から最後まで通しては見ていないのです。
あとは、『釣りバカ日誌』シリーズの「スーさん」――これも、数カットのみ――
同シリーズのどの作品も、最初から最後まで通して見たことがありません。
たった、それだけです。
それだけなのに――
とてつもない存在感を記憶していたのですね。
三國さんのお芝居の所作や顔色を手に取るにように思い出すことができる――
自分の作品に「重石」をつけたくて――
たった1つのシーンだけの出演を三國さんに依頼した映画監督がいたそうですが――
その気持ちは、よくわかる気がします。