マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

誰かに喋ることで失われる何か

 本当に大切なことを――
 人は、なかなか喋ろうとしません。

 それをどうにかして喋らせようと思うことは――
 無益であるばかりか――
 危険です。

 喋りたがっていないことをムリに喋らせると――
 ムリに喋らされたことで、心のバランスを大きく崩しかねませんので――

 きっと――
 喋ることで大切な何かが失われるのです。

 いま、

 ――人は本当に大切なことをなかなか喋ろうとしない。

 と述べましたが――
 実際には、そうではなくて、

 ――人は、それを喋ることで、何か本当に大切なことが失われていくのを予期するときには、それをなかなか喋ろうとしない。

 ということであろうと思います。

 つまり――
 必ずしも喋る内容が大切ではないということです。

 大切なのは――
 誰かに喋ることで失われる何かです。

 それは、理性だったり、諦念だったり、敬意だったり、自尊だったり、克己だったり、虚栄だったり、悔恨だったり、懐古だったり、羨望だったり、慈愛だったり――
 色々でしょうが……。