本当に大切なことを――
人は、なかなか喋ろうとしません。
それをどうにかして喋らせようと思うことは――
無益であるばかりか――
危険です。
喋りたがっていないことをムリに喋らせると――
ムリに喋らされたことで、心のバランスを大きく崩しかねませんので――
きっと――
喋ることで大切な何かが失われるのです。
いま、
――人は本当に大切なことをなかなか喋ろうとしない。
と述べましたが――
実際には、そうではなくて、
――人は、それを喋ることで、何か本当に大切なことが失われていくのを予期するときには、それをなかなか喋ろうとしない。
ということであろうと思います。
つまり――
必ずしも喋る内容が大切ではないということです。
大切なのは――
誰かに喋ることで失われる何かです。
それは、理性だったり、諦念だったり、敬意だったり、自尊だったり、克己だったり、虚栄だったり、悔恨だったり、懐古だったり、羨望だったり、慈愛だったり――
色々でしょうが……。