写真は――
絵画と違って、現実をありのままに写していると考えがちですが――
実際には、そうではありませんよね。
第一には――
写真には枠があります。
枠の外側は、一切、写し出されません。
廃墟と化した街路の路肩に戦車が停まっていて、キャタピラの近くに焼け焦げた人形が落ちていれば――
その写真から、つい何らかの悲愴的な反戦メッセージを感じ取ってしまいますが――
その写真の枠の外で、若者たちが陽気にバーベキューを楽しんでいたりすれば――
実際の趣は、だいぶ異なります。
第二に――
写真で写し出されているものが操作されている可能性があります。
先ほどの戦車と人形との例でいえば――
焼け焦げた人形が撮影前に用意されていたもので、撮影の直前に戦車のキャタピラの近くに置かれたものであったなら――
そこに写し出されているものは、撮影者ないし撮影幇助者の感慨・意図・演出でしかありません。
人の心を打つ写真とは――
これら限界を感じさせない写真でしょう。
枠の狭さを感じさせない写真――
写し出されているものに操作性を感じさせない写真――
そういう写真を撮ることは――
たぶん、そんなに容易ではないでしょうね。