マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

着想なき経験か、経験なき着想か

 芸の独自性には2つあって――

 1つは、

 ――誰もがやっていることを自分にしかできないやり方でやる。

 もう1つは、

 ――誰一人やってこなかったことを自分が一番はじめにやる。

 この2つです。

 この2つ――
 似ているようで、実は全く別次元の独自性なのですね。

 1つめの「誰もがやっていることを自分にしかできないやり方でやる」というのは――
 経験がものをいいます。

 とにかく経験を積み上げて、その上に思考を折り重ね、何事かを練り上げる――

 これに対し――
 2つめの「誰一人やってこなかったことを自分が一番はじめにやる」というのは――
 着想がものをいいます。

 とにかく着想を繰り出し続け、途中で試行も組み入れて、何事かを見つけ出す――

 着想なき経験か――
 経験なき着想か――

 歳をとった人に有利なのは「着想なき経験」で――
 若い人に有利なのは「経験なき着想」です。

 もちろん、「着想なき経験」で着想が完全に欠如しているわけではなく、「経験なき着想」で経験が完全に欠如しているわけではありませんよ。
 着想も経験も、ちょっとはあるのです。

 が、そんなに重きは置かれない――
 そういうことです。