もし僕が画家になったのなら――
一度だけやってみたいことがあります。
それは、
――背中の自画像を描くこと
です。
自分の背中が――
他の人たちには、どんなふうにみえているか――
どんなふうに描けば、自分の背中だとわかってもらえるか――
この問いには――
じっくり考えるに値する深さがあると思うのです。
鑑賞者に背中をみせているということは――
たぶん、その絵の中の自分は、鑑賞者と同じ物をみている、ということですよね。
が――
それでいて、鑑賞者にはみえていない何かを――たぶん絵の中の自分にしかみえていないであろう物や事などを――
いったい、どのようにして、その絵の中に描きこむのか――
それは、考えれば考えるほどに――
自分自身への問いかけが増えていくのです。