――人間が高血圧になるのは塩を口にするからだ。動物は塩を口にしない。だから、動物は高血圧にならない。
という考え方があります。
一般に広く受け入れられている考えです。
実際――
塩を口にする習慣のない少数民族には高血圧の患者が見当たらないのだといいます。
高血圧は脳卒中や心臓発作をきたす徴候と考えられています。
長年にわたって高血圧を放置していると、突然、脳梗塞になったり心筋梗塞になったりするということです。
原始、人間は脳卒中や心臓発作からは自由であったと考えられます。
塩を口にする術がなかったからです。
が――
やがて人間は岩塩の存在を知り、そのうちに塩を精製する技術も覚え、とうとう塩を自在に扱えるようになり――
やがて塩に依存していきます。
精神的にも身体的にも依存していったことでしょう。
まるで麻薬でも求めるかのように――
人間は、塩を自在に扱えるようになって、塩を必要以上に口にするようになり、高血圧をきたし――
そして――
いつの間にか脳卒中や心臓発作に怯えるようになった――
ということですね。
こういう話をきくと、
(やっぱ塩はやめないとな~)
などと思ったりもしますが――
では――
塩のない食事とは――
どんなものでしょうか。
僕は、塩のない食事の経験というのを、ほとんどしておりませんが――
それに近い経験なら、あります。
2011年3月の東日本大震災のときです。
当時、勤めていた職場に津波が押し寄せてきて、10日間ほど身動きがとれず、十分な食事もとれませんでした。
最初の3日間は、量・質ともに十分ではなく――
そのあと、量は改善されましたが、質(栄養のバランス)は十分ではありませんでした。
何かと塩分の乏しい食事が続いたのですね。
菓子パンとか、おにぎりとか――
そして――
久しぶりにお味噌汁を食べたときに、
(こんなにウマいものだったか)
と嘆息しました。
塩分不足を初めて実感した瞬間でした。
あのときの充足感を思い出すと、
(塩をやめるなんて、まずムリだな~)
と諦めざるをえません。
塩への依存は、僕自身にも、たしかにあるのです。