芸術の作品の評価は、どこまでも主観的であると感じます。
もし、それに何か客観的な批評を加えてしまったら――
その作品は芸術とはみなされえない――芸術学の素材となる――
そう思います。
芸術と芸術学との境界は、きわめて曖昧です。
ここでいう「芸術学」とは広い意味での「学」でして――
例えば、芸術家が自身の活動を安定して継続するための方法論なども含みます。
つまり――
プロフェッショナルの芸術家は、少なくとも自前の芸術学を確立し、その知見を基に自身の活動を実践しているはず――
といえます。
そのことは、芸術を鑑賞するほうも何となくわかっているものです。
とりわけ玄人鑑賞者は、よくわかっている――
よって――
いよいよ境界が曖昧となるのですね――芸術と芸術学との境界が、です。
鑑賞者は、鑑賞に徹する以上は、芸術学は不要でしょう。
自身の感性や感情を信じて、ただひたすらに芸を味わう――
そこを目標に据えるのがよいと考えます。
芸術学の不用意な導入は、鑑賞者としての感受性を鈍化させる、あるいは変質させるに違いないのです。