きのうの『道草日記』で――
ビジネスには利益追求型と損害抑制型とがあると述べました。
では――
自然科学研究というビジネスは、どちらでしょうか。
明らかに利益追求型です。
自然科学研究は、得られた知見が将来の科学技術に活かされ、社会に広く利益がもたらされることを想定して行われています。
ただし――
得られた知見がどのような形でどのような科学技術に活かされるかまでは、通常、想定されていません。
そんな想定は人知を超えるからです。
よって――
自然科学研究では、将来の利益獲得を目指してはいるけれども、その目指し方は極めて漠然としていることが普通です。
しかも、最近では自然科学研究の現場に業績主義が浸透してきているといいます。
一定のペースで学術論文を発表し続けれなければ、自然科学研究を行う機会を奪われてしまうようになってきているのです。
この「一定のペース」で「発表し続ける」というのは、明らかに利益追求型には合致しません。
むしろ、「一定のペース」が乱れて「発表が途切れる」ということを損害とみなすならば――
最近の自然科学研究は利益追求型から損害抑制型に変わってきているということでしょう。
自然科学研究では、いわゆる論文不正問題が、ときどき世間を騒がせますが――
損害抑制型のビジネスに変わってきているのならば、驚くには値しないといえます。