きのうの夜――
自宅近くのコンビニエンスストアが閉店しました。
開店して20年――
ちょうど僕が仙台へ引っ越してきて間もなくに開店したお店でした。
以来、なんだかんだで通い続けました。
仙台に引っ越してきてから――
僕は、ただの一度も引っ越しをしていないのですね。
通い続けたのは、たんに最も自宅に近かったからです。
オーナー(経営者)の男性は、細身の長身で、眼光は鋭く、おそらく僕より20~30は年上で――
ちょっと近づきがたい雰囲気の方なのですね。
たまに店の近くの歩道でスレ違ったりしていたのですが――
スレ違いざまに会釈しあうことはなく、立ち止まって世間話を交わすこともなく――
この20年間、ただの一度も無駄話をしたことはありません。
まあ、ふつう、そんなものですよね――行きつけのコンビニの店員さんたちとの関わりなんて――
が――
いよいよ閉店するということがわかり――
このまま、そのオーナーさんと挨拶もなしに別れてしまうのは、どうにもスッキリしなかったので――
きのうの夜――
そんなに必要ではない日用品を買い足すために、そのお店に行ったのです。
夜は、ふだんならオーナーさんは絶対にいらしゃらない時間帯なのですが――
閉店の間際であったためか、きのうはいらっしゃって――
「お店、閉められるんですってね」
僕は話しかけました。
「はい」
と、オーナーさんは頷かれました。
予想外に柔らかな微笑みでした。
「私、20年間、ここに通い続けたものですから……」
「そうでしたね……」
「寂しいです」
「また(別のオーナーが引き継ぐので)よろしくお願いします」
「お疲れ様でした」
「どうも――」
予想外に柔らかな微笑みを拝見したときに――
(もっと早く話しかけてればよかった)
と感じました。
とりわけ――
20年間ずっと通い続けたこと伝えて、
――ああ、そうでしたか。
ではなく、
――そうでしたね……。
と静かなご即答があったときに――
さらに強く、そう感じました。
20年間ずっと通い続けた客は――
そう多くはなかったはずでした。
……
……
まあ――
でも……。
最後に、ちゃんとご挨拶ができて――
よかったと思っています。