物事の原因をとことん突きつめていく思考法は――
50年先、100年先をみる場合には、有効かもしれませんが――
5か月先、10か月先をみる場合には――
そんなに有効ではない、と――
僕は考えています。
有効でないばかりか――
かえって思考を硬直させ、行動を無効にし――
やがて取り返しのつかない失敗を招くことになりかねない――
が――
物事の原因をとことん突きつめていく思考法というのは――
その思考法になじんでいる人たちにとっては、大変に心地よい思考法であり――
それゆえに、つい、
――人類の未来に貢献する。
という美辞のもとに、その思考法に拘泥してしまい――
その結果、知らず知らず、取り返しのつかない失敗を招くことになります。
取り返しのつかない失敗を招くのは、なぜか――
おそらく――
空理空論に埋没するからです。
物事の原因をとことん突きつめるという思考法は――
多くの場合、人の知性の限界を超えている――物事の原因の根本などは、ふつうは判明しません――少なくとも、判明するほうが、判明しないより、遥かに稀です。
にもかかわらず――
その限界を疑似的に(あるいは、錯覚的に)突破するために――
人は空理空論を作り出し、もてあそびたがる――
これは――
大変に恐ろしいことです。
現実の世界にしっかり足をつけて生きていこうと思ったら、
――空理空論ほどに忌わしいものはない。
といってよいでしょうから――
とはいうものの――
それは、ある種の人々(物事の原因をとことん突きつめたがる人々)にとっては、まぎれもなく“甘い蜜”であるということは、肝に銘じつつ……。