失敗をしない人というのは――
本当に何ひとつ失敗をしない人ではなくて――
失敗した場合の損害の大きさを正確に見積もれる人であろうと思っています。
損害の大きさを正確に見積もれるので――
例えば、軽微な損害しか出し得ない挑戦ばかり繰り返し行うのですね。
損害が軽微なものだから――
いくら失敗を繰り返していても、
――あ! あの人、失敗した。
と周囲に気づかれずに済んでいる――
だから、
――あの人は失敗をしない人だ。
と思われるのです――実際には、損害が軽微な失敗を何度も繰り返しているのに――
つまり、「失敗をしない人」は――
実は、「よく失敗をしている人」なのです。
ただし――
その「よく失敗をしている人」というのは、損害が甚大な失敗は、決してしないものです。
失敗をしたら、本当の意味で再起不能に陥ってしまう――それくらい深刻な損害が出る――場合によっては、自分の命を失うことになりかねない――
そういう失敗は、決してしません。
なぜか――
そういう失敗をきたしうる挑戦は、よほどのことがない限り、絶対にしないからです。
失敗をしないセンスというのは――
勇気があるかないかとか、世間体を気にするとかしないとかの問題ではなくて――
ひとえに――
失敗した場合の損害の大きさを正確に見積もれるセンスです。