世の中の“数学嫌い”を減らそうというのか――
ときどき、
――数学は物事を論理的に考える学問であり、例えば、sin や cos は数学ではない。
といった意見を見聞きしますが――
(そんなこと、ないだろ)
と思います。
なるほど――
たしかに、数学は物事を論理的に考える学問ですが――
では、“物事を論理的に考えない学問”が存在するのかといえば――
そんな学問は存在しえないのではないでしょうか。
すべての学問は、事実を基に論理を組み立て、何らかの原理を発見していく営みです。
その営みに中に、例えば――
実験や観察を取り入れれば、自然科学となり――
人間や文芸を取り入れれば、人文科学となり――
社会や世相を取り入れれば、社会科学となります。
数学は――
その“事実を基に論理を組み立て、何らかの原理を発見していく営み”の中に――
数や式や図などを取り入れた学問です。
基となる「事実」の多くが定義や公理などの虚構的前提条件であるという特質を失念するわけにはいきませんが――
数学を数学たらしめる要素は、間違いなく数や式や図などであって、論理ではありません。
もし、“学問を学問たらしめる要素”であれば――
それは、たしかに「論理」といって差し支えないでしょう。
誤解を恐れずにいえば、
―― sin や cos こそが数学である。
なのです。