すべての物事には――
良い面と悪い面とがあるのですよね。
良い面だけということはないし――
悪い面だけということもありません。
その物事の――
悪い面しかみないというのは、とうてい健全な精神とはいえませんが――
良い面しかみないというのも――
ちょっと、どうかと思うのです。
常に良い面と悪い面とを併せみるようにしていかないと――
感性が鈍り、知性が狂うでしょう。
本来は良い面であるにも関わらず、それを“悪い面”だと錯誤したり――
本来は悪い面であるにも関わらず、それを“良い面”だと迷妄したり――
しばしば、
――大人(たいじん)は清濁を併せのむ
などといいます。
大人(たいじん)とは、徳が高く、度量が広い人のことです。
実は――
大人だから、清濁を併せのむのではなくて――
清濁を併せのむから、大人になるのではないでしょうか。
いつも“清”ばかりのんでいると、“濁”の穢れや苦味や臭いがわからなくなり――
いつも“濁”ばかりのんでいると、“清”の輝きや旨味や香りがわからなくなる――
すべての物事について――
良い面を深く知るには、悪い面も知っておく必要があり――
悪い面を深く知るには、良い面も知っておく必要がある――
そう思います。