――無理が通れば道理が引っ込む。
との言い回しがありますね。
道理にかなわない誤ったことが通用するときは、道理にかなった正しいことが通用しなくなる――
あるいは――
いくら道理を主張しても聞き入れられないときは、身の安全のためには引っ込んでいるほうがよい――
そういった意味で用いられます。
僕は――
この言葉が、
――まったくもって正しい。
と認める一方で――
それでも――
この言葉が、
(好きになれない)
といわずにはいられません。
(これほど人の世の醜悪な部分を指摘した言葉も、ないのではないか)
と思うからです。
が――
残念ながら、正しいことは正しい……のですね。
たしかに、人の世では――
無理が通れば道理は引っ込むのです。
(何とかならないものかな)
と思います。
……
……
例えば、
――無理が通れば道理は引っ込む。道理が通れば無理は引っ込む。
と、2つの文を併記してみてはどうでしょうかね。
この言い回しなら、
(人の世も、まだ捨てたものではない)
と思えそうではありませんか。