自分が語ろうとすることに、
――語るにふさわしい価値があるのか。
ということを――
時々、考えるようになりました。
もちろん――
そんなことを真剣に考えていると、何も語れなくなるものですが――
それでも――
今、自分が語ろうとしていることは、ほかの誰か別の人にとって聞くに値することかどうかを考えることは――
ひどく重要なことのように思えることがあります。
そのことを考えた結果――
もし、
――これは語るに値しない。
と判断できるのなら――
その場合は――
何も語らずに黙っているのがよいのではないか――
そう思います。
以上は、
――とにかく黙っているのが一番よい。
ということを主張するものではありません。
しばしば、
――沈黙は金、雄弁は銀
などといいますが――
常に「沈黙は金」というわけではない、と――
僕は考えています。
語るに値することを雄弁に語れるのなら、それは紛れもなく「金」でしょうし――
語るに値することを語らずに黙っているのなら、それは「銀」でしょう――いえ、もしかしたら、それは「銅」かもしれないし、ただの「礫」かもしれません。