いわゆる“お笑い”のネタの一つとして、
――リズムネタ
というのが流行しているようですね。
小気味よいリズミカルな口調で、観客をはやし立てるかのように漫才をやる――
ただし、その掛け合いの言葉に深い意味はない――
ですから――
漫才の達人や玄人にいわせると、
――リズムネタはネタのうちに入らない。
ということになるようですが――
このリズムネタが、10代の若い人たちの間で絶大な人気を誇っていると聞かされたものですから――
僕もネットの動画でチェックをしてみたところ――
……
……
たしかに、面白い……(苦笑
語調は整っているけれども語義には乏しいセリフが妙にハイテンションで続くだけなのに――
なぜか引き込まれてしまうのですよね。
が――
(どこか危険だ)
と直感したことも事実でして……。
リズムネタをひとたび観たり聴いたりした後では――
どうしても、それが頭を離れていかないのですよね。
何なんでしょう、この引き込まれ方は……。
*
“お笑い”のネタとして「リズムネタ」が流行するのは――
今回が初めてではないそうです。
一昔前にも、同じような流行があった、と……。
その折に、リズムネタをヒットさせた芸人さんたちは、
――リズムネタは麻薬のようだった。
と述懐されているそうです。
この「麻薬」というのは――
あくまでステージの上で芸を披露する芸人さんの側にとっての「麻薬」なのですが――
その芸を享受する観客の側にとっても、やはり「麻薬」であるように、僕には感じられます。
ちょっと軽く観たり聴いたりしているぶんには、面白いし、楽しいし、小気味よくて気持ちが良いのだけれど――
それをずっと繰り返し観たり聴いたりしていると――
だんだん心が疲れてくるような感じがするのです。
芸人さんたちにとってリズムネタが「麻薬」である理由は、
――とりあえずリズムネタをやれば、それなりにウケるから、どうしてもやりたくなってしまうのだけれども、やればやるほどに歯止めがきかなくなって、身も心もボロボロになっていくから――
だそうです。
この「身も心もボロボロに」というのは――
おそらく、観客にとっても同じでしょう。
普遍的な理由は巧く説明できないのですが――
少なくとも僕は、このリズムネタを毎日ネットの動画で視聴していたら――
そのうちに必ず身も心もボロボロになっていきそうな予感がしています。
……
……
ひょっとすると――
リズムネタに触れていると――
脳の神経細胞が脳内麻薬を持続的に放出してしまうんじゃないですかね。
脳内麻薬とは――
脳内で快楽を司っている部位の神経細胞に分布していると考えられている物質で――
神経細胞同士が電気信号をやりとりする際に、その仲介役を担っていると考えられている物質です。