――自己諧謔
のできる人は――
強いと思います。
「自己諧謔」とは、
――自分を突き放し、自分のことを冗談(諧謔)にすること
くらいの意味です。
この「自己諧謔」に対する言葉を求めるとしたら――
それは、
――自己陶酔
でしょう。
この「自己陶酔」というのは、きわめて評判の悪い概念ですが――
もし、この心理がまったく存在しなければ――
おそらく――
人は、主観的・高邁的な動機を自己主体的に抱くことがないでしょう。
客観的・実利的な動機を他者依存的に抱くようになる――
たしかに――
自己諧謔ができる人は強いのですが――
もっと強いのは、自己諧謔も自己陶酔もできる人です。
時と状況に応じ、自己諧謔と自己陶酔とを使い分ける――
とくに――
何かを表現しようとする場合に――
自己諧謔と自己陶酔との双方を織り込むことは、相応に効果的であろうと思います――
例えば、作家が小説を書く場合に――俳優が芝居を見せる場合に――歌手が歌を唄う場合に――企業家が経営を語る場合に――政治家が政策を示す場合に――
自己諧謔だけでは、他者を魅了し、惹きつけることができません。
自己陶酔だけでは、他者を共感させ、巻き込むことができません。