ある薬物が――
苦しみの感情や喜びの感情を抑える作用を示すらしいということを――
このほど、アメリカの心理学の研究者が、学術雑誌で発表したのだそうです。
その薬物は、
といって――
鎮痛薬の1つとして広く知られています。
鎮痛薬としては、
――アスピリン
という薬物も広く知られていますが――
アスピリンは喘息などの副作用をきたしやすいと考えられているので――
リスクをとりたくないと考える医師は、アセトアミノフェンを第一選択で処方しているようです。
このアセトアミノフェン――
実は、どうして鎮痛作用を発揮するのか、まだよくわかっていないのですね。
なぜ効くのかはわかっていないけれども、効くことはよくわかっている――
だから、医師は処方しています。
アセトアミノフェンは鎮痛薬ですから――
身体的な痛みを和らげるのは当然として――
それとは別に――
心理的な苦しみも和らげることが知られていました。
もしかして、喜びの方は、いや増してくれたりしていて……。
おそらくは、そのような好奇心から――
実験が企画されたのだと思います。
どのような実験が行われたのか――
100名弱の被験者(大学生)を2つのグループに分け――
片方のグループに十分な量のアセトアミノフェンを服用させ――
もう片方のグループに、それとよく似た無薬効の物質を服用させました。
そして――
どちらのグループの被験者にも、一般に人が喜びそうな写真(猫と遊んでいる子供の写真など)と一般に人が苦しみそうな写真(飢餓で苦しんでいる子供の写真など)とをみせ――
どれくらい喜んだか、あるいは、どれくらい苦しんだかを報告してもらう――
そういう実験でした。
その結果、アセトアミノフェンを服用した被験者らは、服用しなかった被験者らと比べて、喜びも苦しみも総じて弱く自覚したらしいのです。
喜びや苦しみとは無関係の感覚――例えば、写真の中の鮮やかな青の鮮やかさ――では、有意な違いがありませんでした。
よって――
アセトアミノフェンは喜びの感情も苦しみの感情もどちらも和らげるらしい――
という結論に至ったといいます。
感情の程度を被験者らに主観的に申告させている点が、やや気になりますが――
まあ――
それなりに説得力のある発表内容ですね。
この内容を信じるならば――
人の感情は、少なくとも部分的には、物質を基盤としていると考えるのが、妥当でしょう――だって、アセトアミノフェンは物質ですから――
物質は、自然界では、原理・法則に従って、いわば“理詰め”で移動・変化していると考えられます。
よって――
人が感情的に振る舞う場合であっても――
その心理の基盤は自然界の“理詰め”が司っていることになります。
この考えをよく知っておくと――
人は、もっと自分の感情を的確にコントロールしようと頑張れるように思います。
少なくとも僕は、そうです。