まだ大学にいた頃に、
――科学と科学技術とは違う。
といっては――
周囲から怪訝な目で見られることが多々ありました。
科学と科学技術との違いは――
実際に科学の営みや科学技術の開発に携わっていれば容易に実感できるのですが――
そのどちらにも携わっていないと――
たしかに、すぐにはピンとこないかもしれません。
科学とは、実験や観察を基に、新奇の知見を得る営みです。
一方――
科学技術とは、科学で得られた知見を基に、新規に開発される技術です。
もう少し簡単にいうと――
科学は知的好奇心を満たす面白い営みであり、科学技術は人類社会で広く役に立つ技術です。
さらに簡単にいうと――
人々に、
――面白い!
と思わせるのが科学であり、
――役に立つ!
と思わせるのが科学技術です。
このように、科学と科学技術との間には、その気になれば極めて明確な境界線を引けるのですが――
その境界線が曖昧になるのは――
しばしばあることで――
その最大の原因は今日の科学研究の在り方にあると――
僕は考えています。
すなわち――
中途半端な科学研究が多いのですよ。
――いまいち面白くないんだけれど、もしかしたら役に立つかもしれない。
とか、
――何となく面白いかもしれないんだけれど、たぶん役に立ちそうにない。
とかいう科学研究が――
いいかえると――
その研究の結果が、科学として面白いのか、科学技術として役に立つのかが、容易にはわからない科学研究――
ということです。
……
……
どっちつかずでは困るのですよね。
――面白い科学研究
なのか、
――役に立つ科学研究
なのか――
(どっちかにして!)
と、いつも思います――
昨今の科学や科学技術にまつわるニュースをみていると――
……
……
もちろん――
実際には、そこに厳しい現実があって――
当初は、まぎれもなく、その“どっちか”を目指していたにも関わらず、結局は挫折してしまう――あるいは、深刻な軌道修正を迫られてしまう――というパターンが多いのだろうと想像しています。
人々を科学研究で、「面白い!」と惹きつけるのも、「役に立つ!」と説得するのも――
実際には、非常に難しいことなのです。