――事なかれ主義
という言葉があります。
この言葉――
僕は、
(誤解を生みやすい)
と思っています。
ふつう「事なかれ主義」といえば、
――万事が平穏に済みさえすればよいとする消極的な態度や考え方
を指しますが――
(そんなの、人として当たり前だろう)
と思います。
この世に生まれ、この世に暮らしていて、「万事が平穏に済みさえすれば……」と願わない人が――
はたして、いるでしょうか。
そのような意味での「事なかれ主義」であれば――
決して糾弾されるべきではない、と――
僕は思います。
それは、人として自然な心情だからです。
が――
実際には、「万事が平穏に済みさえすれば……」では済まない現実があるからこそ――
「事なかれ主義」は糾弾されるのです。
人々の切なる願いとは裏腹に――
ときに「事」が起こってしまうという厳しい現実――
この現実を直視せず、理解せず、まったく受容しようとしない態度や考え方こそが「事なかれ主義」であり――
それは、決して「消極的」ではなくて、むしろ「無責任」といえましょう。
「事なかれ主義」とは、
――万事が平穏に済むことを夢想し、何ら有事の対策をとろうとしない無責任な態度や考え方
である、と――
僕は考えています。