マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

エラい人は、なぜか悪いことしか予言できないけれど

 小学校に上がって1年か2年が経った頃――
 近所の友人が、そのお母さんの言葉として、こんなことをいっていました。

 ――エラい人は、なぜか悪いことしか予言できない。良いことも予言できない人は、信用する必要はない。

(たしかに、そうだな~)
 と――
 子ども心に納得をした記憶があります。

 1980年代序盤の話です。

 たぶん、そのお母さんの念頭にあったのは――
 当時、『1999年7の月に恐怖の大王が来るであろう』の予言で有名であった16世紀フランスの占星術ノストラダムスでした。

 あれから30年以上が経ち――
 中世ヨーロッパの占星術師に限らず、不吉なことを予言する“エラい人”というのは、一向に後を絶ちません。

 つい先ごろも――
 イギリスの理論物理学スティーブン・ホーキング博士らが、国際的な学術会議の場で、

 ――近い将来、人工知能兵器による“ロボット戦争”が勃発する。

 との警句を発したそうですが――
 これなどは、まさに「エラい人は、なぜか悪いことしか予言できない」の典型例ではないでしょうか。

(だから、信用しないぞ~)
 と――
 小学生のマル太なら思ったでしょうが――

 中年になったマル太は、
(でもな~)
 と思うのです。

(予言するなら、やっぱり“悪いこと”だろう)
 と――

(“良いこと”を予言しても、あんまり意味はないだろう)
 と――

 なぜならば――

 “悪いこと”を予言しておけば――
 その後、その“悪いこと”が起きないように、皆で必死に努力をするかもしれません。

 もし、予言が外れたら、皆で大喜びです。

 逆に――
 “良いこと”を予言したら、どうなるか――

 たぶん、その後、誰かが必死に何らかの努力をする、ということはありえないでしょう。

 予言が外れたら、皆で落胆するだけです。