――金運
という言葉を――
僕は理解していませんでした。
誤解していた――と、いってもよいでしょう。
皆さんは――
例えば、占い師さんから、
――きょうのあなたには金運がある。
といわれたら――
どんなことを期待しますか。
僕は、
――きょうは思いがけない臨時収入があるのかな。
とか、
――変な無駄遣いをうっかりしないで済むのかな。
といったことを期待していました。
つまり――
金運があれば、収入は増え、支出は減るのだと、理解していたのです。
が――
「金運」には、そういう意味はないそうです。
いえ――
そういう意味も、ないことはないそうですが――
もう少し違った意味があるようでして――
それは、
――おカネを使うことで得られる利点の確かさに恵まれる。
という意味です。
どういうことか――
いま、同じ1万円で専門書を買うか、テーブルを買うかで迷っている人がいるとしましょう。
このとき――
その人に金運があれば――
どちらを買っても満足できます。
専門書を最後まで読んだ結果、たしかに1万円に見合う優れた専門書であることがわかったり――
テーブルを何年も使いこんだ結果、1万円の割には使いやすいテーブルであることがわかったり――
一方――
その人に金運がなければ――
どちらを買っても落胆します。
実は、10ページに1か所くらいの頻度で誤記があるとわかったり――
実は、硝子製や金属製の食器で容易に傷つくことがわかったり――
いまは、わかりやすさのために“1万円”としましたが――
実際に大切なのは、
――単位金額あたりの利点の確かさ
です。
使うおカネは、いくらでもかまいません。
1000円でも10万円でもよい――
1000円に見合った利点を確かに得られるか――
10万円に見合った利点を確かに得られるか――
それが金運です。
前提となっているのは――
どんな慧眼の人であっても、おカネを使う際に、使った後のことを全て見通すことはできない――
ということです。
多少なりとも不確実な要素が残されている――
その要素が“吉”と出るか“凶”と出るか――
それが金運です。
よって――
収入が多く、支出は少なくても、金運のない人はいる――
あるいは――
収入が少なく、支出は多くても、金運のある人はいる――
ということもできます。