マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

「魔女狩りの狂詩曲」の錯覚

 知っているようで知らない言葉を、ただ気軽に連ねていくと――
 ただそれだけで――
 何か、たいそうなことを言い表せたような気持ちになってしまうから――
 不思議です。

 どういうことか――

 例えば――
 知っているようで知らない言葉として、

 ――魔女狩り

 と、

 ――狂詩曲

 とがあったとして――
 これらの言葉をとりあえず気軽に連ねて、

 ――魔女狩りの狂詩曲

 とすれば――
 ただこれだけで――
 何か、たいそうなことを言い表せたような気持ちに――
 例えば、ヨーロッパ精神史の秘匿的な出来事を言い表せたような気持ちに――
 なってしまう、ということです。

 もちろん――
 これは錯覚です。

魔女狩りの狂詩曲」と言ってみたところで――
 実際の「魔女狩り」や「狂詩曲」をよく知っている人たちにとっては、

 ――なんじゃ、そりゃ……。

 といった程度の意味合いしか持たないのですね。

 一つひとつの言葉を知っているようで知らないうちは――
 そのような錯覚が楽しく感じられ、気が紛れたりもするのですが――

 一つひとつの言葉をきちんと知るようになると――
 途端――
 その錯覚で楽しむことに虚無感や罪悪感を覚えるようになるのですね。

 自戒を込めて、そう思います。