マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

「ディスる」は恥ずかしいか

 ――ディスる

 という俗語が定着していますね。

 ――(相手を)軽蔑した上で、罵(ののし)ったり貶(けな)したりする。

 くらいの意味です。
 語源は、英語の俗語の

 ―― diss(dis)

 と、いわれています。

 この言葉は、英語の「disrespect」の短縮形で――
 意味は「尊敬しない、無礼な扱いにする、軽蔑する」などです。

「disrespect」自体は、古くからあった言葉のようですが――
 2000年頃に、アメリカのヒップ・ホップ系の音楽業界で、この言葉が盛んに使われたことがあり――
 そのことで、日本での認知度が上がり――
 2010年頃には、「ディスる」という日本語が定着し始めていたようです。

 他にも――
 英語の接頭語の「dis-」が語源であるいう説もあります。

「dis-」は、語頭に付いて「非」とか「不」といった意味合いを与えます。

 例えば、「communication(コミュニケーション)」に「dis-」が付いて、

 ―― discommunication

 となると、「コミュニケーション不全」という意味になります。

 この説によれば、「ディスる」は、

 ――相手の存在や人格そのものに、「非」や「不」といった意味合いを与える。

 くらいの意味になる、と――
 解釈するのがよいでしょう。

 最大限の侮辱といえそうです。

     *

 日本語の「ディスる」が、英語の「disrespect」の短縮形である「diss」に由来していると考える人たちの中には、

 ――「ディスる」という言葉を嬉々として使っている日本人を見かけると、恥ずかしくなる。

 と感じる人がいるようです。

「diss」は、アメリカのヒップ・ホップ系の音楽業界で20年前に流行していた言葉です。
 20年前に流行していた言葉を、いつまでも後生大事に使っている様子は、

 ――ちょっと滑稽ではないか。

 というのが、その主旨です。

 が――
 僕は、そうは思いません。

 というのは――
 英語の「diss」と日本語の「ディスる」とは――
 根本的に異なる言語体系に組み込まれているからです。

 英語と日本語との違いは――
 単に、使われている国や地域の違いを指すのではありません。

 言語としての組み立てが違う――

「diss」も「ディスる」も、ともに動詞として使われている一方で――
「diss」は、「diss/dissed/dissed, dissing」と変化し――
ディスる」は、「ディスら(ディスろ)・ディスり(ディスっ)・ディスる・ディスれ・ディスれ」と活用します。

 こんなにも違うのに――
「diss」と「ディスる」とを同じ言葉とみなせるでしょうか。

 2000年頃のアメリカのヒップ・ホップ系の音楽業界で「diss」を使いこなしていた人たちにとって――
 2015年現在の日本の「ディスる」は、おそらくは想像さえしていなかった言葉でしょう。

ディスる」は「diss」から派生し、発展的に独立していった言葉といってよいでしょう。

ディスる」という言葉を使うのに、何ら恥ずかしがる必要はない、と――
 僕は感じます。

 ……

 ……

 誰かをディスるは、よくないですけどね。