たいていの男は――
恋を知り、恋を習い、恋に通じ――
やがて、恋によって女性と繋がることを覚えます。
が――
恋は脆い――決して長続きはしないものです。
恋の脆さを知って――
男は、恋に厭き、恋を忘れ、恋を嫌うようになります。
そして――
恋によってではなく、愛によって、女性と繋がることを覚えるのですね。
ところが――
なかには――
いつまでたっても、恋に厭かず、恋を重ね――
恋に熟達する男がいます。
そういう男は――
愛によって女性と繋がることを、いつまでも覚えようとしません。
恋に熟達した男は――
恋の脆さをよく知っているのに――
恋によってしか女性と繋がろうとしないのです。
そして――
女性が恋に応えて、その男に愛を注ぎ始めると――
男は、
――しまった。
と思います。
――自分の恋が女を惹き寄せてしまった。
と――
そして――
その女性のことを、不憫に思い始めるのです。
――なんと、いたましいことだ。
と――
恋に熟達した男は――
自分の恋が決して長続きしないことを、よくわかっているのですね。
それゆえに――
男は、自分の恋を秘匿し、女性を拒み始めます――その女性が、恋の脆さによって傷つけられることのないように――
――ときには冷たく突き放す愛もある。
という主張です。
恋に熟達した男は――
恋によって繋がっていた女性を、わざわざ愛によって切り捨てるのですね。
こういう男は――
現実の世界では、ただのトラブル・メーカーであったりするのですが――
虚構の世界では、“男の美学”を具現した孤独なヒーローであったりします。
そういう男に惹かれる女性が、はたして実在するのかどうかを、僕は知りませんが――
そういう男に深く感じ入る男が、けっこう多くいるということを、僕は知っています。