先日――
25年ほど前の東京の夜景を伝える映像をみて、
(うわ~、あの頃の夜は東京でも暗かったんだな~)
と痛感しました。
25年前というのは――
僕が高校の頃です。
その頃――
すでに、
――東京の夜は明るい。
といわれていました。
当時としては明るかったはずの夜景が、今となっては暗く感じられたのですから――
はっきりいって、戸惑いましたよ。
同じ頃――
学校の国語の授業で、随筆『陰翳礼讃』のことを知って、
(へえ~。ずいぶん面白い発想をする人がいるもんだな~)
と感じ入ったのですが――
その随筆が――
昭和初期(昭和8年頃)に文豪・谷崎潤一郎によって書かれたものであることを知って――
唖然としたことを覚えています。
谷崎の『陰翳礼讃』は――
ごく簡単にいってしまえば――
日本人の生活の場が明るくなりすぎてしまったことを憂う内容です。
(昭和初期なら、まだ十分に暗かったろうに……)
と苦笑せずにはいられませんでした。
人は――
明るいことには、容易に馴染みやすく――
暗いことには、容易に馴染みを失ってしまうのでしょうね。