マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

バッドエンドの喜劇やハッピーエンドの悲劇というのを

 悲劇と喜劇とは――
 一見、根本的に異なる物語と考えられがちですが――
 
 どちらであっても、物語が真に悲喜こもごもである限りは――
 本質的な差異はないといってよいでしょう。

 良質の悲劇は、悲哀の中にも笑いを盛り込み――
 良質の喜劇は、笑いの中にも悲哀を漂わす――
 などといいます。

 どちらの物語も――
 観客を悲しませたり、喜ばせたりすることに趣旨がある点では――
 共通しているのです。

 もし、物語に本質的な差異があるとしたら――
 それは、ハッピーエンドとバッドエンドとの間にあるのでしょう。

 一般に、悲劇はバッドエンドであり、喜劇はハッピーエンドであることが多いのですね。

 このことが、悲劇と喜劇との間に何か本質的な差異があるかのように錯覚させている、と――
 僕は考えています。

 試みに――
 バッドエンドの喜劇やハッピーエンドの悲劇というのを考えてみましょう。

 そのような喜劇や悲劇は――
 そう簡単には成立しそうにありませんが――

 もし成立しうるとしたら――
 次のことがいえそうではありませんか。

 ――バッドエンドの喜劇をバッドエンドの悲劇から区別することは、不可能である。

 ――ハッピーエンドの悲劇をハッピーエンドの悲劇から区別することは、不可能である。