ハッピーエンドの物語とバッドエンドの物語とでは――
バッドエンドの物語のほうが虚構性が高いと考えています。
ハッピーエンドの物語も、虚構性は決して低くはありませんが――
バッドエンドの物語ほどに高くはないと思うのです。
ハッピーエンドの物語は――
物語の紡ぎ手が、物語の受け手に対し、
――後味の悪い思いをしてほしくない。
との願いが込められているという点において――
ウソがありません。
どんな物語の紡ぎ手も――
自分の物語を悪く思ってほしいとは、なかなか願わないものですから――
もちろん――
バッドエンドの物語でも――
物語の紡ぎ手が、物語の受け手に対し、「後味の悪い思いをしてほしくない」と願っていないわけではないのですが――
そんな願いをおくびにも出さずに、物語をバッドエンドにするわけですから――
その分、ハッピーエンドの物語よりもウソが徹底しているといえます。
そのようなわけで――
バッドエンドの物語はハッピーエンドの物語よりも虚構性が高いと考えることができるのです。
ちなみに――
虚構性の低い物語というのは、どんな物語か――
それは――
ハッピーエンドでもバッドエンドでもない物語――
あるいは――
ハッピーエンドともバッドエンドともとりかねる物語です。