報道への人々の関心は――
まったく異なる2つの動機によって支えられているように感じられます。
一つは公共的な問題への関心――
もう一つは私秘的な問題への関心です。
これら2つの関心が、個人の心の中で、入れ替わり立ち替わり顕現化するものですから――
ときに、政治や経済の重大ニュースを押しのけ、タレントの不倫騒動やアイドル・グループの移籍騒動が盛んに報道されます。
そのような報道を繰り返す報道機関や――
そのような報道に関心を抱く人々を糺したり蔑んだりする向きもあるようですが――
僕個人は――
そんなに簡単には糾弾も侮蔑もできない――
と考えています。
(事態は、もう少し複雑であろう)
と――
タレントの不倫騒動やアイドル・グループの移籍騒動は――
間違いなく私秘的な問題です。
第一に、タレントやアイドル・グループのメンバーの方々にとっての私秘的な問題であり――
第二に、それら芸能人の皆さんの私秘的な問題に関心を抱く人々にとっての私秘的な問題です。
そして、そこには――
芸能人の皆さんの私秘的な問題に自分自身の私秘的な問題を結びつけ、
――ところで、うちの家庭や職場は、どうなんだ?
と関心の対象をおもむろに移す――
そんな心的機序が介在しているように思えてならないのですね。
政治や経済の重大ニュースよりもタレントの不倫騒動やアイドル・グループの移籍騒動に関心を抱く人々は――
遠い国会や広い市場の動向ではなく、より身近な家庭や職場の動向へ無意識に関心を向けてしまっているにすぎない――
と、僕は考えています。
いいかえるなら――
芸能人の皆さんの騒動を通して、おそらくは無意識の内に、自分自身の騒動を――あるいは、騒動の火種を――じっとみつめているにすぎない――
ということです。
そうした個人の心の移ろいを糾弾したり侮蔑したりするのが適当でないことは――
すぐに、おわかりいただけるかと存じます。