――カネの貯め方は2つしかない――出るカネを減らすか入るカネを増やすかの2つだ。
といった主旨の話を――
よく耳にします。
たしかに、その通りと、僕も思いますが――
ちょっと気になる点もありまして――
それは、
――2つしかない。
というところです。
僕としては、
(2つもあるの?)
といいたいところなのですね。
(そりゃ大変だ)
と――
おカネの貯め方に2つあるということは――
貯金の管理は2変数処理であることを意味しています。
人は2変数処理が苦手です。
何とか対応できるのは1変数処理のみで――
変数が2つ以上になると、それら変数を同時に意識して勘案することは基本的に不可能です。
数学では――
二次方程式を解くときに、因数分解を用いて2つの一次方程式に分離するという思考法がとられます。
あるいは――
2変数関数を微分するときに、変数を1つずつ定数とみていくといった演算法がとられます。
これらのことは――
人が2変数を同時に意識して勘案することの困難性を反映したものといえます。
世に、
――貯金は苦手だ。
という人は少なくありませんが――
貯金の管理が2変数処理であることを考えれば、
――苦手なのは当然――
ということになります。
もう少し具体的にいうならば――
ほとんどの人は、貯金を増やそうと思ったら、支出を減らすことか収入を増やすことかの、どちらかしか考えません――どちらも同時に考えるということは、なかなかできない――
例えば、
――支出を減らし、同時に収入も増やして……。
とか、
――支出の増加分が収入の増加分を下回るように……。
とかと考え始める人は――
かなり珍しいといってよいでしょう。
そして――
そのように考え始めても頭が混乱しない人というのは、さらに珍しい――
そう思うのです。