マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

ショートコントのようだ

 先日、電車に乗っていて――

 駅に停車中の僅かな時間に――
 ホームから中年の女性客が入ってきて――

 ドア近くの座席にいた僕に向かって、
「これ、○○方面の電車ですか」
 と訊いてきました。

 僕は、その時――
 ずっと書き物をしていて、現状がわからなかったので、
「ここ、何駅ですか」
 と、訊き返しました。

「△△駅です」
 というので、
「あ。じゃあ、違いますね」
 と、僕――

「え? 違う!」
 女性客は慌ててホームに降りていきました。

 ……

 ……

 どういうことかといいますと――

 僕は、A駅発・L駅行の電車に、C駅から乗り込みました。
 その路線の駅は、次の通りでした。

   A―B―C―D―E―F―G―H―I―J―K―L

 その女性客が入ってきたのはJ駅です。

 そして――
 僕に向かって、

 ――この電車はG駅方面か。

 と訊いてきました。

 ところが――
 僕は、C駅で乗車し、D駅を過ぎた頃から、書き物に没頭していたので――
 J駅に着いた頃には、自分がJ駅にいるのか、I駅にいるのか、H駅にいるのか、G駅にいるのか、F駅にいるのか、E駅にいるのかが、わかりませんでした。

 よって、「この電車はG駅方面か」と訊かれ、

 ――え? そんなの、わからないよ!

 が本音でした。
 
 というのは――
 もし、自分が今――
 E駅やF駅にいるのなら、答えは「はい」ですし――
 H駅やI駅やJ駅にいるのなら、答えは「いいえ」です。

 それで――
 前述のような、ちょっと変わった会話になったのですね。

  女性客 「これ、G駅方面の電車ですか」
  マル太 「ここ、何駅ですか」
  女性客 「J駅です」
  マル太 「あ。じゃあ、違いますね」
  女性客 「え? 違う!」

 ……

 ……

 この会話――

 ちょっとショートコントのようだと思いませんか。