マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

1つしかない“最も伝えたいこと”を正確に把握する

 人の話を聴く時に――
 絶対に忘れたくないことがあります。

 それは、

 ――相手が最も伝えたいと思っていることは、たいていは1つしかない。

 ということです。

 もちろん――
 ただの“伝えたいこと”なら、2つや3つくらいあるのが普通でしょう。

 が――
“最も伝えたいこと”が2つ以上ある場合は、きわめて稀といえます。

 例えば、2つの“伝えたいこと”があって――
 それら「伝えたい」の思いの強さが互いに完全に拮抗している、ということは――
 普通は考えられません。

 たいていは、どちらか一方の「伝えたい」が、もう一方の「伝えたい」より強いものです。

 よって――
 人の話を聴く時は――
 その1つしかない“最も伝えたいこと”を正確に把握することが欠かせません。

 もし、相手の“2番目に伝えたいこと”や“3番目に伝えたいこと”を、相手の“最も伝えたいこと”だと誤解をすると――
 相手は必ずや不満感や不安感を抱きます。

 きのうの『道草日記』でも述べたように――
 人の話を聴くということは、1) 聴く、2) 受けとめる、3) 働きかけるの3つの過程から成ります。

 相手の“最も伝えたいこと”を引き出すのは、“聴く”の過程です。

 この過程で、相手に不満感や不安感を抱かせると――
 その次の2つの過程である“受けとめる”や“働きかける”に深刻な悪影響を及ぼします。

 ですから――
“聴く”の過程では、わずかな不満感や不安感でさえも抱かせないように、細心の注意を払いたいところです。

 では――
 相手に不満感や不安感を抱かせないように“聴く”には、どうしたらよいのでしょうか。

 ……

 ……

 実は――
 これといった妙手はありません。

 ひたすら愚直に確認をとるしかないのです。

「確認をとる」とは――
 直接的かつ明示的に、

 ――それが、あなたの最も伝えたいことか。

 と訊ねることです。

 もちろん――
 状況に合わせて言葉を選ぶ必要はあります。

「そのことが一番のお悩みなんでしょうね」
 とか、
「それが、いま最も大事なこととお考えですか」
 とか、
「きょうは、そのことが話したくて来たの?」
 とか、
「ぶっちゃけ、こういうことなんじゃない?」
 と――

 そのように訊ねて――
 相手が、

 ――その通りだ。

 と肯定すれば――
 それで問題はありませんし、

 ――いや、そうではなく……!

 と否定すれば――
 その後に話し始める内容こそが“最も伝えたいこと”である可能性が高いといえます。

 他にも――
 有効な確認のとり方として、

 ――いま話をしたこと以外で、何か伝えておきたいことはないか。

 と訊ねる方法があります。

 この確認のとり方は、意外と重宝します。

 というのは――
 相手の話を30分くらい聴いた後で、
「ほかに何かお話ししておきたいことはありませんか」
 と訊ねたところ――
 その時点でようやく“最も伝えたいこと”を相手が語り始める、ということが――
 決して珍しくないからです。