人の話を“受けとめる”というのと――
たんに人の話を“聴く”というのとでは――
様相は、まったく異なります。
いかに異なるのか――
……
……
違いは――
実際に反応してみせるか否かの違いです。
……
……
話をしている者が話を聴いている者に対して期待する反応――
というものがあります。
例えば――
一緒に喜んでほしい、一緒に悲しんでほしい、一緒に怒ってほしい――
あるいは、明るく笑ってほしい、目を見開いてほしい、真剣に考え込んでほしい――
そういう反応です。
相手が自分に、どんな反応を期待しているかは――
相手の“最も伝えたいこと”を的確に掴んだ上で、自分なりに想像をすることで、わかります。
あくまでも「想像」です。
分析でも解釈でもない――
時には直感や空想、偏見を含みます。
こうした「想像」によって、相手が自分に期待しているであろう反応に当たりをつけ――
その反応を実際に示してみせることが、“受けとめる”です。
人の話を“受けとめる”のが難しい理由は――
一つは――
この「想像」が、しばしば外れるからです。
それ以外に、もう一つ理由があって――
それは――
自分なりに想像をして当たりをつけた反応を、実際に我が身で示してみせることには――
少なからず抵抗感を伴いうるからです。
例えば、相手が怒ってほしいと期待しているのがわかったとして――
その期待どおりに起こってみせる気には、どうしてもならない、感情的にできない――というようなことが――
いくらでも起こりえます。
つまり――
人の話を“受けとめる”ことの難しさは――
相手の期待を正確に想像する難しさと相手の期待に実際に沿ってみせる難しさとの、掛け合わせです。