マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

完全に恋人か夫婦だと思った

 ある晴れた夏の日に、電車に乗っていたら――
 わりと混んできまして――

 満員というほどではないにせよ――
 とりあえず座席に空いている様子はなく――
 通路には多くの乗客が立っていました。

 ふと――
 向かいの長イスに目をやると――

 30歳前後の男女が――
 身を寄せ合うようにして座っています。

 長イスは、昔ながらのの様式で――
 とくに座面が区切られていません。

 なので――
 2人が身を寄せ合っていても、ことさら不自然ということもなく――

 2人の服装が、どちらも、こざっぱりとした夏らしいものであったことが――
 全体の印象を良くしていました。

 男性は――
 白い半袖のポロシャツに、グレーの作業衣のようなズボンをはき、麦わら帽子のようなものを片手に持ちつつ――
 手元のスマートホンを夢中でいじっていました。

 女性は――
 紺の半袖のブラウスに白い膝上のタイト・スカートをはいて、涼しげなデザインのサンダルの上に素足をみせつつ――
 やはり、手元のスマートホンをいじっています。

 ただし、ちょっと異様だったのは――
 女性は、素足に膝上のタイト・スカートをはきながら、左右の太ももで日傘を挟みこんでいたところでして――

 ちょっとご想像いただければ、おわかりのように――
 少しお行儀が悪いのですね。

 まあ――
 見方を変えれば、

 ――艶っぽい

 といえなくもありませんが――

 たぶん――
 それだけ、女性が男性に気を許している証拠だ――
 と理解しました。

 ……

 ……

 さらに――
 その女性が男性のほうに、ややもたれかかっていましたので――

 僕は2人を完全に恋人か夫婦だと思い込んだのですが――

 その2人――

 次の駅で、互いに何の言葉も交わすことなく――
 それぞれ別々の方向に去って行ったのですね。

 ……

 ……

(へ?)
 と驚きました。

(もしかして、赤の他人どうしだったの?)
 と――

 ……

 ……

 開いた口が塞がらない、とは――
 このことでしょうか。

 全くの他人どうしの男女が、電車の長イスに、あんなふうにして座るとは――

 世の中、すっかり変わってしまったのでしょうか。

 それとも――
 元々こういう世の中なのでしょうか。

 ……

 ……

 あるいは――
 僕は何か勘違いをしているのでしょうか。

 ……

 ……

 よくわかりません(苦笑