美しさに傷があるために――
その美しさが、いや増している――
ということが――
しばしば、あります。
(は……!)
と息を飲むくらいに、いや増している――
……
……
――傷
というのは、いいすぎです。
――不調和
とか、
――期待との不一致
とか――
あるいは、
――美の限局的な途絶
とでもいいましょうか。
寸分の隙もない完璧な美は――
“傷”のある美の前では、かえって色褪せうる――
ということです。
……
……
美は、主観的に感受されるものです。
そして――
感受性は、しばしば摩耗します。
完璧な美ばかりを感受していると――
主観の自我は、だんだん飽きてくるのです。
が――
……
……
その美に“傷”があると――
美への感受性が研ぎ澄まされていく――
主観の自我は、飽きずに済むのです。