マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

たぶん、そこにウソはない

 先日のアメリカ大統領選挙で敗れたクリントンさんの言葉に――
 これまでにない迫力を感じました。

 ――若い人たちに伝えたい。自分の信念を貫くことに価値はあるのだ、と――

 という言葉です。

 ……

 ……

 自分の信念を貫き通すことは――
 一般には、危険なことでしょう。

 その信念が他者と広く共有されうるようなものでもない限り――
 どうしても軋轢を生むからです。

 軋轢を避けるために――
 人は、しばしば自分の信念を曲げます。

 そうした妥協こそを、

 ――大人になることだ。

 と考える人たちもいます。

 そうした考えを――
 クリントンさんは暗に否定しました。

 かなり思い切った発言でしょう。

 ……

 ……

 いわゆるファースト・レディの経験者として政治家になり――
 大統領選挙に挑戦し――
 敗れ――

 自分を破った現大統領のもとで、重要閣僚を経験し――
 いったん下野した後――
 再度、大統領選挙に挑戦し――
 敗れました。

 齢69――
 3度目の挑戦は、ほぼ不可能でしょう。

 クリントンさんの政治生命は――
 今回の大統領選挙の敗北で、事実上、断たれたといえます。

 そんなクリントンさんがいう言葉だから――
 迫力があるのです。

 政治生命を保っているクリントンさんがいうなら――
 まったく同じ発言であっても――
 ここまでの迫力はなかったはずです。

 ……

 ……

 古典で、

 ――鳥のまさに死なんとする、その鳴くや哀し。人のまさに死なんとする、その言うや善し。

 との句が伝えられています――『論語』の一節だそうです。

 ――鳥が死のうとする時、その鳴声は悲哀である。人が死のうとする時、その発言は善良である。

 くらいの意味でしょうか。

(たしかに……)
 と思います。

 なぜ発言が善良なのか――

 たぶん――
 そこにウソがないからです。